Ryzen 5 3600 オーバークロックはほぼ不可能?!X570マザーでOC検証してみた。(おまけでダウンクロックも)
Ryzen第3世代のうちZEN2コアを採用している中ではもっとも安価なCPU Ryzen 5 3600 を購入しました。(Ryzen 5 3500 という更に廉価なモデルが発売されましたね)
Ryzenは全てのモデルがオーバークロック可能なので、今回はこの Ryzen 5 3600 がどの程度オーバークロックできるのかを検証していきたいと思います。
オーバークロックの環境
- マザーボード X570 AORUS ELITE (BIOSはF10a AGESA 1.0.0.4 B)
- メモリ Trident Z RGB for AMD 16x2 XMP 2933 CL16 (3466 CL16 で使用 memtest完走済み)
- グラフィックボード Geforce RTX 2060
- 起動ドライブ Intel 760p 256GB
- CPU クーラー GAMDIAS 240mm 簡易水冷(ラジエーターから吸い込むようにファンを設置しているためラジエーターに吹き付けるようにファンを設置するより多少冷却性能が低い可能性あり)
- 室温 およそ25℃
- ベンチマーク時は他のアプリケーションは起動せずに測定(バックグラウンドを除く)
- Windowsの電源設定は Ryzen High Performance(省電力設定は全てオフ)
オーバークロック検証開始
今回はBIOS側でCPUクロック・CPU電圧のみを変更しながらオーバークロックして行こうと思います。それに加え、高負荷時の電圧降下防止機能(高負荷時に自動でCPU電圧が昇圧される機能)のLLC設定も初期設定のAutoの状態で計測します。
ただし、Core Performance Boost と Global C-state は無効にしておきます。
使用するソフト・負荷テスト・ベンチマーク
- Cinebench R15 完走(負荷 軽)
- Cinebench R20 完走(負荷 普通)
- OCCT 10分間エラーなし(負荷 重)
こちらの3つを使って性能と安定性を検証します。
また、CPUの消費電力及びCPU温度は、Cinebench R20 マルチコアベンチマーク時の最大値を HWmonitor というソフトで計測します。
まずは定格でベンチマーク
まずは定格状態でCinebench R15・R20!
Cinebench R15
- マルチコア 1551cb
- シングルコア 192cb
Cinebench R20
- マルチコア 3526cb
- シングルコア 476cb
CPUの消費電力は約90Wで、CPU温度は70℃前後を推移していました。
いずれも、1万円以上も高価な Intel Core i7 9700k や 8700kに対して、シングルは肉薄、マルチは肩を並べるスコアです。
定格でも、2.5万円で手に入るCPUとは思えないハイスコアなのですが、一つ残念なのが、定格状態だと結構電圧が高めにかかるんですよね~(AMDあるある)
ベンチマーク中は、HWmonitor・CPU-Z 読みで1.4V近くまで普通に昇圧されます。その影響か、240mm簡易水冷でも平気で70℃前後まで温度が上昇してしまうんですよね笑(定格のまま純正クーラー使ったら絶対ブンブンうるさい...)
さて、ここから少しずつOCをしていきましょう!
4GHz
CPU電圧
1.202Vに設定してあります。
Cinebench R15
- マルチコア 1566cb
- シングルコア 185cb
Cinebench R20
- マルチコア 3573cb
- シングルコア 457cb
CPUの消費電力は73W、CPU温度は60℃でした。
オーバクロックとはいえ、定格でもブーストクロックは4.2GHzに設定されているので、マルチコアは定格とほぼ誤差程度の違い、シングルコアは逆にスコアが下がってしまいました。
ただし、電圧が定格状態よりもかなり低いため、CPU温度・CPU消費電力ともに大きく下がっていることがわかります。
付属CPUクーラーなどを使われるなら、多少性能を犠牲にしても、このくらいの設定のほうが、静音性を維持できるのでいいかもしれません。
4.1GHz
CPU電圧
Cinebench R15・R20 は1.25Vで難なく通りましたが、OCCTは1.29Vまで昇圧しないと完走しませんでした。
Cinebench R15
- マルチコア 1621cb
- シングルコア 191cb
Cinebench R20
- マルチコア 3707cb
- シングルコア 475cb
CPU消費電力は78W、CPU温度は63℃でした。
シングルコアは定格同等、マルチコアはR15で70cb位上がりました。
4.15GHz
CPU電圧
Cinebench R15・R20は 1.31Vで通りましたが、OCCTの完走にはなんと1.4V必要でした。 すでに結構厳しそうです。
Cinebench R15
- マルチコア 1649cb
- シングルコア 194cb
Cinebench R20
- マルチコア 3751cb
- シングルコア 481cb
CPU消費電力は95W、CPU温度は74℃でした。
大幅に電圧を上げた影響で、消費電力・温度共に4.1GHzから大きく上昇してしまいました。
4.2GHz
CPU電圧
1.4V → Cinebench R15 OK Cinebench R20 NG
1.424V → Cinebench R15 OK Cinebench R20 OK OCCT NG
OCCTはいくら電圧を上げても無理そうだったので諦めました。4.2GHz以上での常用は現実的ではなさそうです。
Cinebench R15
- マルチコア 1669cb
- シングルコア 196cb
Cinebench R20
- マルチコア 3805cb
- シングルコア 485cb
CPU消費電力は105W、CPU温度は76℃に達しました。(OCCTは通らなかったため1.424Vで計測)
常用できそうなのは4.15GHzまで…
オーバークロックを試した感覚でいくと、4.1GHzまではすんなりクロックが上がるのですが、4.15GHzあたりで一気に要求電圧が上がりました。
4.15GHzまでは何とか現実的な発熱と消費電力で常用可能なレベルの安定性にできそうですが、4.2GHzまでくると、Cinebench R20 を通すのに1.42V必要で、ベンチ中の消費電力も100Wを超えてしまいました。更に上にも書いたとおり、これ以上昇圧してもOCCTは通りそうにありません。
結論:OCするのもアリだが...
定格・4.1GHz・4.15GHz それぞれの差を表にしてみました。
定格 | 4.1GHz | 4.15GHz | |
---|---|---|---|
R15 Single | 192cb | 191cb | 194cb |
R15 Multi | 1551cb | 1621cb | 1649cb |
R20 Single | 476cb | 475cb | 481cb |
R20 Multi | 3526cb | 3707cb | 3751cb |
CPU 温度 | 68℃ | 63℃ | 74℃ |
CPU 消費電力 | 90W | 79W | 95W |
結論から行くと、常用するなら...
- 定格はワットパフォーマンス(以下ワッパ)&発熱が芳しくないのでオススメしない
- ワッパ&発熱思考なら 4.1GHz
- 少しでも性能を上げたいなら 4.15GHz
というふうになるかなと思います。
4.1GHz - 4.15GHz間の性能の上昇幅
- Cinebench R15 マルチコア 1621cb → 1649cb(約2%の上昇)
- Cinebench R15 シングルコア 191cb → 194cb(約1.5%の上昇)
に対して
- 消費電力 78W → 95W
- CPU温度 63℃ → 74℃
発熱と消費電力の上昇は割りにあいません(それがOCと言われればそれまでだが...)
これを聞いて、"それはないな"と思ったワッパ思考の人なら4.1GHz、少しでも性能を上げたいんだという人は4.15GHzにそれぞれするのがベストなんじゃないかなと思います。
第三世代Ryzenの中では最廉価グレードなので、選別落ちのダイが使われているらしいというのは聞いていましたが、正直ここまで手動OCが厳しいとは思っていませんでした。
常用ではなくベンチマークを計測したいだけなら、4.2ないしはそれ以上のクロックも可能かとは思いますが、常用するとなると4.15GHzあたりが限界のようです。
私は、冷却に余裕がある上にワッパも気にしない人なので4.15GHzで常用していこうかなと思います。
(最後にOCの検証結果ですが、CPUの個体差があるのであくまで参考程度にお願いします)
・おまけ・ ダウンクロック(省電力化)も試してみた。
ZEN2 CPU は IPC(1クロックあたりの性能)が大幅に向上したということで、消費電力と発熱を抑えながらどこまで性能を発揮することができるのか、実際にダウンクロックをして検証してみたいと思います。
パフォーマンス重視 3.9GHz
CPU電圧
1.13VでOCCTを完走しました。
Cinebench R15
- シングルコア 181cb
- マルチコア 1543cb
Cinebench R20
- シングルコア 451cb
- マルチコア 3524cb
消費電力はちょうどTDPと同じ65W程、CPU温度は57℃でした。
いずれも、とても3.9GHzで動作しているとは思えないハイパフォーマンスです。
クロックがそこまで高くないため、CPU消費電力・CPU温度ともに低い値に収まっています。これなら、パフォーマンスをそこまで損なわずに付属のクーラーでも問題なく冷やし切ることができると思います。
とにかく省電力 3.6GHz
最後に、ベースクロックと同じ3.6GHzでどこまで電圧を下げられるかやってみました。
CPU電圧:面白い傾向が判明
普通ならCPU電圧が足りないと、ベンチマーク中にエラーで止まったり、パソコンがフリーズしたり、ブルースクリーンが出たりと動作が不安定になることが多いのですが、今回3.6GHzで電圧不足になると、CPU使用率が100%まで上がらずにCPUが全力を出せなくなるものの、OCCTですらエラーを吐くことはありませんでした。他の環境でもこの挙動になるかは分かりませんが、これなら低電圧化のハードルが少し下がるのかな?と個人的には思いました。
最終的に、3.6GHzでパフォーマンスがきちんと発揮できた下限電圧は1.022Vでした。
Cinebench R15
- シングルコア 168cb
- マルチコア 168cb
Cinebench R20
- シングルコア 417cb
- マルチコア 3244cb
CPU消費電力は50W、CPU温度は49℃でした。
3.9GHzと比較すると見劣りするものの、クロックや消費電力を考えたらものすごいパフォーマンスです。(この設定に需要があるかはさておき)
結局、ダウンクロック!とか言いつつ、実質自動OCをオフにして低電圧化しただけでしたね笑
いかがだったでしょうか? (^^)
すこしでも皆さんのPCライフのお役に立てればと思います。
閲覧ありがとうございました。 _(._.)_ペコリ
マザーボードのレビューも書いたので、よければ是非!